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【虐殺器官】小説のネタバレとラストの嘘を考察!感想まとめも

gyakusatukikan

2009年に34歳の若さで病没した夭折のSF作家、伊藤計劃氏デビュー作『虐殺器官』。

「ベストSF2007」国内篇第1位、「ゼロ年代SFベスト」国内篇第1位。

2017年2月には劇場アニメ化が公開、アメリカではパク・チャヌク監督による実写映画化も発表されています。

今回は小説『虐殺器官』のエピローグの紹介と作者が自身のブログで語った「主人公の大嘘」である部分の考察をしていきたいと思います。

ネタバレを含んでいますので未読の方はご注意ください。

またネット上の感想もまとめてみました。

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虐殺器官の種類

『虐殺器官』には原作である小説をもとにコミカライズ、映画化されています。

小説『虐殺器官』(ハヤカワ文庫JA)

作者:伊藤計劃

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漫画『虐殺器官』(KADOKAWA)

画:麻生我等  原作:伊藤計劃 ⁄ Project Itoh

2017年1月26日現在2巻まで発売中

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映画 『虐殺器官』

2017年2月3日公開

伊藤計劃さんの作品『屍者の帝国」と『ハーモニー』、そして『虐殺器官』の

3作品を劇場アニメ化するプロジェクト第3弾。

他にも2016年にアメリカでの実写映画化が発表されています。

漫画は現在連載中ですのでラストシーンがどのようになるかはまだわかりませんが

漫画『虐殺器官』の2巻までのネタバレはこちらの記事になります)

ここでは小説のラストについての考察をしていきます。
 
 

小説『虐殺器官』ラストの嘘を考察

考察の前にまず『虐殺器官』のあらすじを振り返っていきます。

あらすじ

サラエボで発生した核爆弾テロによって世界中で戦争が激化。

アメリカを始めたとした先進諸国はテロの脅威に対抗していた結果

後進国では内戦により虐殺が横行していた。

アメリカ情報軍で特殊任務に就いていたクラヴィスは暗殺指令を受け

虐殺を扇動しているとされるアメリカ人ジョン・ポールを追う。

ジョンの恋人であったルツィア・シュクロウプにクラヴィスを監視。

チェコ語の教師をしていたルツィアに生徒として近づくが次第にルツィアに惹かれていく。

ある日、ルツィアと一緒にいるところをジョンの仲間らに襲撃される。

ジョンと対面したクラヴィスは

「人間には虐殺を司る器官が存在し、器官を活性化させる“虐殺文法”が存在する」ことを聞かされる。

クラヴィスはウィリアムズらに助けられるがジョンとルツィアは行方をくらます。

その後、ジョンを捕まえるが護送中にジョンを利用していた上院院内総務の手によって逃げられてしまう。

再びジョンの暗殺命令を受けたクラヴィスはルツィアとともにいたジョンと再会。

クラヴィスは生きたままジョンを連行しようとしたが

ウィリアムズによってルツィアが射殺されてしまう。

クラヴィスはグレネードを投げ入れウィリアムズを爆殺。

ジョンを連れて逃げるが作戦のため兵士と合流したところでジョンは兵士により射殺される。

エピローグでのクラヴィスの『嘘と作者が設定した裏読み』

作者のブログでは『虐殺器官』に対して下のようにエピローグで主人公は大嘘をついているかもしれないと語っています。

いや、突っ込まれどころ満載の本なので、痛いよう、痛いよう、なのですが、
「英語だとイギリスとか世界全部の英語圏にいくんじゃね?」
「アメリカが○○たら全世界に迷惑がかかるんじゃね?」
という大ツッコミには自分で言うのもなんですが、一応裏読みが設定してあります。
とはいえ、なんか書いた人間が自分であれこれ言うのも見苦しい気がしますし、
世の中に出た時点で自分も一読者に過ぎないわけですから、
エピローグで主人公はあることについて大嘘をついているかもしれなくて、事実はどうなのか、
は一応それまでに触れられているかもしれない、
という程度にとどめておきたいと思います。

引用元 伊藤計劃:第弐位相より

ではエピローグでクラヴィスは何を語っていたのか、取り上げてみます。

・母親が契約していた情報会社からアカウント情報が送られてくる。

・母親の生死を決める時にライフグラフをみることはできたが怖れてしなかった。

・だが、ルツィアとジョンの死を経た今はその怖れは違った意味であるはずだ。

・閲覧した母親の記録にはぼくの記録はほとんどなかった。

・一緒に住んでいたときに母親からずっと見られていた背筋が走った冷たい視線は愛情だと証明されるはずだった。

・あの視線はいったい何だったのか、空虚に圧倒される。

その空虚にジョンの『虐殺の文法』がはまった。

・暗殺部隊であったぼくは議会公聴会でかつてジョン・ポールが行ったように虐殺の文法の物語を綴った。

・虐殺の深層文法はアメリカ全土に広がり内戦状態に陥ろうとしていた。

ぼくは罪を背負うことにした。ぼくは自分を罰することにした。

・アメリカ以外の全ての匡をすべて救うために

・ジョン・ポールがアメリカ以外の命を背負うと決めたように。

クラヴィスは英語で『虐殺の文法』を綴ったので、それなら英語圏の国にも虐殺が起こり得るのではないか、

といったような書評に対して作者は『裏読みが設定してあります』とブログで語っています。

またコメント欄では主人公は本心を隠しているとも言っています。

形式として一人称を選んだ物語は、多かれ少なかれ自己欺瞞と韜晦(とうかい)ですし。

いかにその人格が誠実に見え(読め)ようとも。

この主人公にしても、一見ナイーブに見えながら、

軍人としてやることはきっちりやっているプロなわけですし

誰にも伝わる事のない内面で、その残酷さの言い訳しているだけなのです。

そういう意味では相当卑屈な人間であると言えます)。

引用元 伊藤計劃:第弐位相 より

※韜晦(とうかい)=自分の本心や才能・地位などを つつみ隠すこと。

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裏読みは何だったのかを考えてみるとチェコ語を教えていたルツィアが

「英語は今や覇権言語ですからね」とクラヴィスに言っていたように

英語で虐殺文法を綴ったのであれば、アメリカを始め英語圏や英語を話す人々から世界中へと広がっていくと考えられます。

世界中が戦争になる。

それはクラヴィスがジョンの夢見ている『終末』を想像して

クラヴィスの見る『死者の国』と変わらない風景に安らぎを感じていた(P140)ことからも

世界中が戦争になる=『終末』を望んでいたことが触れられていた部分なのかと思いました。

また下のシーンにもあるようにクラヴィスは戦場に身を置いておくことで自分の『存在』を見出していました。
 
 
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インドへ少年少女兵と戦う前に行われたカウンセリングを受けているときのシーン

これから先の職場でぼくは自分自身の動機を信じられるだろうか。

大義でもなく、家族愛でもなく、ましてや報酬でもなく

ただ戦場という圧倒的な現実の中で生き延びること。

生の実感を得るために受け入れた罪がぼく自身のものでなかったとしたらー

そのとき、ぼくの「生の実感」のすべては嘘でしかない。

銃弾飛び交う中で発せられる、いまここに存在しているという声なき叫び

それらが偽物ではないと誰かに教えてほしい

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そして、クラヴィスの父親は理由も告げず自殺しています。

母親は自分が理由なのでないかという呪縛。

『母は父に呪われたのだ』とあり、母親の視線はクラヴィスを通して自殺した夫をみていたのかもしれませんね。

クラヴィスが『母は父に呪われたのだ』と思っていたように

本当は愛情からの視線ではないことに気付いていたのかもしれません。

母親の視線が愛情からくるものではなかったことからの空虚。

母親の記録から自分の存在がなかったこと、戦場でしか『生の実感』を感じられなかったクラヴィスが

軍隊をやめて求めたのは新たな『戦場』だったのか。

「アメリカ以外の全ての国を救う」という大義名分を目隠しに

虐殺の文法をばらまいたのかな、と。

世界中にばらまいたという『罪』が『生の実感』になっているのかもしれませんね。
 
 
あなたはどんなふうに考察しますか?
 
 

感想まとめ

読者の感想ツイートを集めてみました。

ジョンとクラヴィスの会話の中で食料生産をコントロールできない時代の名残で

「虐殺の文法は食料不足に対する適応だった」とあります。

エピローグの最後のほうでクラヴィスは家に食料をたっぷり溜め込んであった、

それを狙ったコソ泥を射殺したというあたりは『虐殺の文法』は進化の過程で残された機能であることを表してるのかな。

そう思うと生死というテーマが描かれている物語ですが

文章の面白味に読後感に重さは残りませんでした。
 
 
あなたはどんな感想を持ちましたか?

 
 

まとめ

ハヤカワ文庫の新装版では作者の伊藤計劃さんと遺された原稿を引き継いで『屍者の帝国』を描き上げた

円城塔さんとの対談が載っています。

また、翻訳家の大森望さんが解説されていて伊藤計劃さんの作家人生を振り返られています。

それらを読むとこんなスゴイ作家の新しい作品がもう読めないのかと思うと

本棚に大事にしまって何度も読み返したい本になりました。

以上、『【虐殺器官】小説のネタバレとラストの嘘を考察!書評まとめも』でした。

最後まで読んでくださって ありがとうございました。

あなたは『虐殺器官』のラストをどう思いましたか?

感想を下のコメント欄から教えてもらえるとうれしいです。

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One Response to “【虐殺器官】小説のネタバレとラストの嘘を考察!感想まとめも”

  1. […] (原作小説『虐殺器官』の結末のネタバレはこちらの記事になります)     […]

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